もっとも重い等級認定となる遷延性意識障害とは?
今回は、交通事故が引き起こす障害の1つである、「遷延性(せんえんせい)意識障害」についてご紹介します。
遷延性意識障害とは、頭部外傷が原因となり発症する障害で、呼吸や循環器系、その他の自律神経機能は正常ではあるものの、身体を動かすといった運動機能、感触を感じるといった知覚機能、頭で何かを考えるといった知能活動がほとんど機能していない状態を言います。
どういった交通事故で起こり得るかと言えば、事故の際、脳への強い衝撃がきっかけとなって、遷延性意識障害になってしまうことがあります。
遷延性意識障害の判断基準
上記にて、遷延性意識障害の大まかな障害については説明していますが、下記にてさらに詳しい判断基準についても見ていきましょう。下記は、日本脳神経外科学会にて定めた基準です。
- 自力で移動ができない
- 自力で食事ができない
- 発声はできるものの、会話ができない
- 眼を動かすことはできるが、それが何かを認識できない
- 呼びかけに応答することはあっても、意思疎通はまるでできない
- 上記の状態が3ヶ月以上継続している
上記のような状態の場合、遷延性意識障害と診断されることになっています。
このように、遷延性意識障害はかなり重い障害となっていて、自賠責法による後遺障害認定では、第1級1号に認定されることになっています。つまり、もっとも等級認定が高い後遺障害です。
遷延性意識障害の賠償請求には問題点が多い
上記のように、遷延性意識障害は、常に介護を要することからも、もっとも等級認定が高い後遺障害となっています。しかし、加害者側の保険会社によっては、等級認定がされたにも関わらず、長生きができないため平均寿命から損害額を算出すべきではない、通常の生活ができないのだから生活費はそれほど必要ない、といった無思慮な主張がなされることがあります。こういった主張がされた場合は、しっかりと反論をし、正当な損害賠償額を得られるように交渉をしていくしかありません。場合によっては、裁判も視野にいれるべきでしょう。
過去の裁判例と見比べながら争っていく
交渉にて折れてくれる保険会社であれば良いのですが、そうでない場合は裁判にて解決をするしかありません。裁判となると過去の裁判例が非常に重要となってきます。というのも、一度下された裁判例というのは、裁判所の判断がぶれてしまわないという意味合いもあり、いかなる場面でも重要視されることになっているのです。もちろん、必ずしも優先されるわけではありませんが、裁判で戦うのであれば過去の裁判例と見比べるのは重要なことです。
しかしながら、過去の裁判例を出すとなると、専門知識がどうしても必須になってしまうため、素人では太刀打ちできないと言えます。やはり、裁判にまで発展してしまいそうな場合は、弁護士といった専門家に依頼をしたほうが良い結果が出ると言えるでしょう。